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議会報告
REPORT

10.10

2025年第3回定例会 本会議・認定第1号「令和6年度中野区一般会計歳入歳出決算の認定について」に対する賛成討論:広川まさのり 2025/10/7

認定第1号「令和6年度中野区一般会計歳入歳出決算の認定について」
に対する賛成討論

 上程中の「令和6年度中野区一般会計歳入歳出決算の認定について」に対して、日本共産党議員団の立場で賛成討論をおこないます。

 

 2024年度は、依然として物価高騰や円安の影響が区民生活を直撃し、またウクライナ情勢や国際的な経済の不安定さが続いた年度でした。区政にとっても、住民の暮らしと営業を守る「公の責任」が強く問われた一年でした。
 同時に、新庁舎移転がおこなわれ、区政運営の基盤を整える重要な年度でもありました。基本計画後期に位置づけられた重点プロジェクトの具体化や、施策評価を踏まえた次期計画への準備など、区の中長期的な方向性を示す節目の年度でした。

 

 2024年度一般会計の歳入総額は約1,894億円、歳出総額は約1,852億円となり、実質収支は約31億円の黒字となりました 。前年度が歳入歳出ともに膨らんだのに対し、2024年度は平時に近い規模へと移行しつつも、堅実な財政運営が図られたことがうかがえます。
 基金残高は年度末で約754億円となり、前年度の過去最高水準からは減少したものの、依然として高い水準を維持しており、実質公債費比率などの主要な財政指標も健全な水準にあるところから、区の財政基盤は引き続き安定しているといえます 。

 

 以下、賛成の理由を4点述べます。
 第1に、2024年度は、依然として物価の高騰が区民生活に重くのしかかる一年でした。区はこの状況を受け、価格高騰支援給付金や生活応援給付を実施するとともに、学校教材費の補助、保育・介護事業所への支援、中小事業者への光熱費助成など、幅広い対策を講じました 。区立だけでなく私立や国立の学校に通う児童生徒の保護者に対しても給食費相当額を給付し、全世帯を対象とした普遍的な支援を行ったことは、国や都の制度を待たずに独自に区民の暮らしを守る姿勢を示したものとして高く評価します。

 

 第2に、「子育て先進区」を掲げる中野区として、多くの施策を展開しました。スクールソーシャルワーカーの増員やスクールロイヤーの配置によって、学校現場におけるいじめや不登校などの課題に対し、法的・福祉的な側面から支援する体制を整えました。さらに、放課後や夏休み期間に学校図書室を開放し、子どもたちの居場所を確保したことも評価できます。教員の長時間労働の緩和のために、学級担任を補佐する職員を配置したことは、教育現場の長年の課題に対して一歩踏み込んだ対応でした。また、子どもの貧困対策として学習支援事業の対象学年を拡大し、子ども食堂の新規開設を支援するなど、地域全体で子どもを支える仕組みを強化しました。さらに、高校生への医療費助成の実施、ひとり親家庭への支援強化は、経済格差の拡大を抑止し、子どもたちの成長機会を守る政策として重要でした。

 

 第3に、区は「誰もが安心して暮らせる地域社会」を目指し、地域包括ケア体制の整備を進めました。高齢者福祉に加えて、ヤングケアラーやひきこもり、認知症への相談体制を強化したことは重要な取組です。また、補聴器購入費助成を制度化したことは、高齢者の社会参加や生活の質向上に資するものとして高く評価できます。医療的ケア児への取り組みも拡充しており、障害者支援においても、生活支援や就労支援の強化が図られました。

 

 第4に、区は、2022年に制定した「人権及び多様性を尊重するまちづくり条例」に基づき、性別、性自認、性的指向、国籍、人種、民族、文化、障害など、さまざまな違いを尊重し、すべての人が地域社会の一員として安心して暮らせるまちづくりを進めています。2024年度においても、この理念を踏まえた多文化共生施策が着実に展開されました。特に、外国人住民が地域で安心して生活できるよう、生活相談や日本語学習支援の拡充、多言語対応の強化、災害時の支援体制整備などが行われたことは評価できます。
 一方で、社会全体では依然として外国人や少数者に対する偏見やデマ、排外的な言説が見られます。こうした流れに対して、中野区が明確に「差別・排外主義は許さない」という姿勢を示し、地域社会の理解を深める啓発事業や教育活動を継続していることは、極めて重要な意義を持つものです。
 中野区は、国籍や文化の違いを超えて互いを尊重し合う「多文化共生の地域社会」を築く自治体として、今後もこの姿勢を区政全体に貫いていくことを期待します。

 

 最後に、来年度予算編成に向けて、改善・留意すべきと考えることを述べます。

 

 1つに、2024年度決算では、積立基金残高は約754億円と高水準を維持していますが、将来の大規模事業や災害対応などへの備えを確保しつつ、目の前の生活困窮に直面する区民支援を同時に進める基金活用が求められます。基金を単なる貯金として温存するのではなく、区民の福祉と安心を下支えするために計画的・戦略的に活用することを強く求めます。
 生活相談件数はコロナ禍を上回る水準となっており、長引く物価高騰で暮らしの苦しさが広がっています。それにもかかわらず、区独自財源による物価高騰対策は限定的であり、一般財源で対応した額は2億円余規模にとどまっています 。今後は、国や東京都の補助金に依存するのではなく、区独自の裁量で迅速に生活支援策を打ち出すことが必要です。例えば、住宅・家賃助成、エネルギー価格高騰に苦しむ中小事業者への補助強化など、実効性ある政策を展開することを求めます。さらに、策定中の公営住宅長寿命化計画においては、安心して住み続けられるよう、入居者や居住者の負担軽減とともに、住環境の改善を図るべきです。また、区内の介護保険事業にあたっては、事業者の運営状況を適切に把握し、運営の継続を支援する取り組みを強化すべきです。

 

 2つに、債権管理体制の再検討についてです。これまでも指摘してきたところですが、滞納情報の一元化は実現していません。税や国保料、介護保険料などの債権ごとに管理が分かれ、生活困窮者や外国籍区民への支援が十分に届かない状況が残されています。単に徴収強化に偏るのではなく、生活再建型の債権管理体制を区として確立することが急務です。そのためには、福祉部門との連携、ケースワーク体制の強化、他自治体の先進事例の調査研究を進め、滞納者を孤立させず、生活支援と税や保険料の納付を両立させる仕組みを構築するよう強く求めます。

 

 3つに、再開発・公共事業のあり方についてです。中野駅周辺をはじめとした大規模再開発が進行する中で、建設資材や人件費の高騰が続いています。こうした事業が区財政を圧迫し、結果として区民サービスの削減や区民負担増に直結することがあってはいけません。また、まちづくりにおいて、環境配慮・脱炭素化の視点を持つことも重要です。今後の区有施設の整備・改修や都市基盤の整備にあたっては、事業費の精査と適正化を徹底するとともに、区民合意を前提とした持続可能な都市計画を進めること、脱炭素ロードマップに掲げている環境形成型のまちづくりを進めることを強く求め、「令和6年度中野区一般会計歳入歳出決算の認定について」に対する賛成の討論を終わります。

 

 

 

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