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2025年第2回定例会 本会議・第67号議案「中野区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」に対する反対討論 武田やよい 2025/6/192025.6.19
武田やよい
第67号議案「中野区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」
上程中の第67号議案「中野区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」について、日本共産党議員団の立場で反対の討論を行います。
本議案は、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が施行されたことに伴い、区市町村による認可事業である「乳児等通園支援事業」いわゆる「こども誰でも通園制度」の設置基準を条例により定めるものです。
「孤立する子育ての不安に応え、親の就労にかかわらず、すべての子どもの育ちを応援する」という理念には全面的に同意いたします。しかし、この制度の内容は、あまりにも保育現場の実態を無視し、子どもの命と安全を守る上で大きな懸念があります。以下、反対の理由を2点述べます。
1点目は、子どもの命と安全を守る上で大きな懸念があることです。
「こども誰でも通園制度」の利用は、事業者との直接契約です。預ける園、曜日、時間を決めて定期的に利用する方式だけでなく、スマートフォンのアプリで空き状況を見て、その都度空いている園、時間にスマホから直接申し込む方式が考えられています。政府は、柔軟に、簡単に、タイムリーに予約できることを新制度の利点として押し出し、できるだけ利便性を高めたシステムにするとしています。空きがあれば直前の予約も可能で、全国どこの事業所にも予約できます。
市町村が事業を認可しますが、認可基準は緩く、必要な保育従事者のうち保育士は半分でよいとされています。乳幼児を、事前の面談なしに保育士資格のない人が見ることが可能な仕組みです。直前の予約も可能という制度の下では、アレルギーや発達状況など必要な情報が把握されず、命に関わる事故が起きかねません。保育所における死亡事故の発生は、0歳から2歳児、預け始めの時期が最も多いにもかかわらず、緩い基準での認可が可能です。近年、広がりを見せているスポットワーク(いわゆるスキマバイト)による従事者の雇用も懸念され、子どもの安全が保てるのか強く危惧されます。
2点目は、子どもの成長過程に応じた保育の専門性・重要性を軽視している点です。
保育園・幼稚園は、子どもが初めて社会生活を体験する場であり、成長過程に応じた発達を保障するための場です。だからこそ保育士の皆さんは、子どもたちの特性や特徴を踏まえ、最善の保育が子どもたちに行われるよう、その専門性を発揮し、子どもとの安定的・継続的な関わりを重要視していますが、当該制度で、「安定的・継続的な関わりの構築」ができるのか疑問が残ります。
また、人見知りの時期の乳幼児を事前面談もなく単発的に数時間預けることは、子どもにとっては大きなストレスであり、通常保育児への影響も懸念されます。
実際に、千葉市が今年5月にまとめた「令和6年度こども誰でも通園制度試行的事業検証結果報告書」では、保育従事者の声として、通常保育へ【良い影響があった】16.7%に対し、【悪い影響があった】との回答が50%を占めており、自由記述では「初めての環境に泣く利用児童が多く、通常保育も落ち着くまでに時間がかかる。」「利用児童の泣き声で在園児の食事や活動に支障が生じる。」「慣れずに泣き続ける子が多く、心身の負担が大きい。」など、と報告されています。
「子どもの育ちを支援する」という言葉とは裏腹に、子どもたちに負担を強いるものとなっているのではないでしょうか。
中野区が国の定めた基準を一部上回る基準を定める提案をしていることは承知していますが、これらの懸念を解消するものにはなっていません。
「親の就労に関わらずすべての子どもの育ちを支援する」というならば、親がどれだけ働いているかなどで対象を絞る、「保育の必要性」の要件を見直して、希望する全ての子どもたちに質の確保された保育を保障できるようにすべきと考えます。保育士の処遇改善と配置基準の抜本的改善を行い、公的保育を拡充することで「誰でも通園」の土台をつくることを国に求めることを要望し、反対の討論といたします。