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議会報告
REPORT

03.25

3月25日 2022年 第1回定例会 本会議 第28号議案「中野区子どもの権利に関する条例」に対する賛成討論:小杉一男

上程中の第28号議案、中野区子どもの権利に関する条例に対し、日本共産党議員団の立場で賛成の討論を行います。本条例案は、子育て先進区を実現していく上で、欠かすことができない、区の政策の理念的基盤となる条例と言えます。賛成の理由を3点のべます。

 第1は、子どもの権利を国際的に保障する「子どもの権利条約」の「約束を守るため、全力を尽く」すなど、本条例案が同条約の精神に則ることを宣言していることです。1989年に国連での「子どもの権利条約」の採択、1994年4月に日本での同条約の批准、2016年に児童福祉法改定がされてきました。子どもと家庭をめぐる環境は、児童虐待や不登校、いじめ、貧困など、さまざまな困難にさらされています。現在、東京都内においては、児童虐待に関する相談及び対応件数は増加を続けており、中野区においても同様の傾向が見受けられます。
 子どもの権利条約では、締約国はすべての子どもが条約で決められた「子どもの権利」を尊重し、「子どもの最善の利益」を確保するとしていますが、ようやくこの中野区においても、本条例の制定によってそれらを実現する一歩を踏み出すことになります。
 本条例案第9条で、子どもが「家庭環境、経済的な状況、社会的身分、国籍、人種、民族、文化、障害の有無、性別、性自認、性的指向等により差別をされ」ず、前文でも「だれ一人取り残すことなく、すべての子どもが幸せに生きていけるよう子どもの権利を保障」すると無差別保障を掲げたのは崇高な理念であり、評価します。

 第2は、2019年度に実施した「中野区子どもと子育て家庭実態調査」や、中野区子どもの権利擁護推進審議会での子どもたちの意見聴取・アンケートの内容が反映した審議会の答申が、十分かつ適切に踏まえられたものとなっていることです。こうした子どもたちの学校や家庭での生活実態を踏まえつつ、同審議会で、つぶさに議論し、検討した最善の条例案となっていると考えます。
 諮問では「子どもの権利擁護」とされていた表現の「擁護」について、審議会答申では「『子どもは擁護するべき対象である』と受け取られる懸念がある」とされました。わが会派からも度重なり「子どもを主体としてみる姿勢が弱まる」ことを指摘してきました。また、子どもにも理解できるように平易な用語を使用し、「です・ます調」で記載したことも評価します。
 また、前文では、「子どもにやさしいまち」とキーワードが盛り込まれていることや、大人や子どもの思いが込められたものとなっていること、それぞれの場所や場面別での権利が規定されていることなど、答申が反映されています。
 同審議会の答申後には、区民と区長のタウンミーティングで「子どもの権利」のテーマを取り上げたことや子どもを含めた区民から意見聴取したこと、同「条例の考え方」についての意見交換会の開催、同条例案に盛り込むべき事項についてのパブリック・コメント手続きが行われたことなど、区民の声を踏まえたのは大いに評価するものです。

 第3に、審議会答申でいう「子どもの権利を保障し続ける仕組み」として、子どもに関する区の計画などについて子どもの意見を聞く「子ども会議」(19条)や、推進計画や子どもの取り組みを検証する「子どもの権利委員会」(22条)、子どもの権利侵害への速やかな保障を図る「子どもの権利救済委員」(24条)の設置が規定されたことです。そのことを高く評価します。
 とりわけ、「権利救済委員」の職務では、第三者性や独立性が確保されるのは重要です。条例設置の自治体の多くは、選任された同委員が子どもからの苦情を聞き、助言・支援及び関係機関への協力依頼などを行っています。相談で解決しない場合は、救済申し立てにより関係者等への調査に入ったり、その過程で事実関係の確認や必要と認める場合は、勧告や意見表明、是正要請などを行ったりもしています。中野区においても着実に前へ進めていただくことを要望します。
 一方で、子どもの権利侵害を防止するためにも、子どもたちが、自らの気持ちを表明し、どんなことでも気軽に相談できる体制を整備することも求められています。他自治体での先行事例を見ても、同委員が子どもたちに認知され、「困っていること」をいつでもどこでも何でも相談できるようになるには、誰でも親しめる工夫とともに、広報・啓発の活動をはじめとした、粘り強い活動が重要といえます。

 同条例案の運用に当たって、以下の2点を求めます。

 第1に、子どもに関わるいじめ、虐待、自殺など深刻な事態が広がる中だからこそ、学校教育の日常の中で本条例案がしっかりと生かされることを求めます。子どもたちの様子や保護者の声によると、学校生活における子どもたちをめぐるストレスやプレッシャーは以前に比べて強いものになっています。児童生徒が精神的苦痛を受け、不登校になった児童も少なくなく、不登校児童生徒や保護者への差別や偏見もあります。
 国連の子どもの権利委員会は1998年から度重なり、日本の教育分野の過度な「受験競争」への懸念を示してきました。競争主義を脱却することや子どもを学びの主体としてとらえること、個に寄り添う教育など、今後の教育実践を子どもの権利の視点で捉え直していく必要があります。
 一般原則で最も重要とされる「子どもの意見等の表明及び参加」(13条)は、子どもを守られるのみの存在ではく、力ある存在として、「声」を発することができる存在と位置づけています。教育行政において、学校運営を行う中で、同条例案を生かす取り組みを進めていくことを心から願うものです。

 第2に、新年度より児童相談所の設置に伴い、里親家庭や児童福祉施設など「社会的養護を必要とする」児童生徒に関する事務事業なども移管され、区の責任と役割はより重いものになります。本条例案はこれらを子どもの権利の視点からとらえ直す試金石となります。大いに権利保障の実践を進めることを期待します。
 子どもたち、特に社会的養護を必要とする子どもたちは、自分の人生でありながら、あらゆる時点で人生の主人公でいることが許されず、コントロールすることを奪われてきました。そして、18歳を過ぎると自立を強いられます。障害のある人々が自立生活を実現しようとする運動の中で「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」というスローガンがあります。これらは子どもらにとっても基本的な願いです。
 2017年に厚生労働省は「新しい社会的養育ビジョン」で、権利を侵害されている当事者の権利擁護や代弁を行う「アドボカシー」を初めて示しました。全国では、「当事者である子どもの権利擁護の取り組み」を行う自治体はわずか2割弱に留まっており、「(権利擁護の)仕組みの構築に必要な人材の養成や確保」が課題とする自治体が半数を超えています。中野区において先行自治体での、権利ノートの配布や意見箱の設置など、さまざまな取り組みに学びながら積極的な取り組みを行うとともに、求められる人材の養成や確保を求めるものです。

 最後に、議会の質疑の中で、子ども観の違いが露わになりました。しかし、これからは子どもの権利という考えをまずは知り、それを生活の言葉にしていくことが求められます。本条例案の成立を力にして、子どもの「声」を大切にする社会を実現するための努力が至る所で開始されることを期待し、賛成の討論といたします。





 

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