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議会報告
REPORT

06.15

6月15日 議員提出議案第10号「「学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書(案)」に対する反対討論:いさ哲郎

 議員提出議案第10号「学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書(案)」について、反対の立場で討論いたします。

 

 会派としてデジタル化そのものを頭から否定するつもりはありません。しかしながら、現在政府の進めるデジタルトランスフォーメーションは、デジタル化そのものが自己目的化しています。本来教育とは、子ども同士の生きたやりとり、教員自身の深い教材研修でこそ質が深まるものです。ICTはあくまでもその補助であって、デジタル機器をどう使うかは個々の教員に委ねられなければいけないと考えます。既にデジタル教科書を一部導入している現場の教員からは、児童の特性に応じ紙の教科書の黙読が良い場合、デジタル教科書で文字を拡大した方が良い場合、音声で読み上げた方が理解が進む場合などといった使い分けが大事であることが指摘されています。研修が一律にタブレットなどを使う前提で行われるのだとすると、教員の自主性自立性が損なわれ、児童の特性に合わせた授業ができなくなることにもなりかねません。記書き4番目に「紙面の活用と対面学習の併用を検討すること」との表記があります。この点は大事ですが、それを実現するための教員の自主性自立性の担保について記載がありません。

 

 意見書では「個別最適な学び」「協働的な学び」の充実についても触れていますが、2021年1月26日の中教審答申では「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないようにという指摘があり、そのためにも「協働的な学び」が必要だとし、同じ空間で時間を共にする主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が大切であり、人間同士のリアルな関係づくりは社会を形成していく上で不可欠としています。つまり答申は、本来的な教育のあり方を棚上げし、デジタル化に前のめりになっている政府の姿勢を危惧するもので、そうした文脈の中で「協働的な学び」という言葉が使われています。教育現場からも、デジタル化によって直接体験や子どもの学び合いが失われないか、との中教審と同趣旨の危惧が相次いでいます。

 

 また本意見書には、「個人情報の取扱い及び管理も含めた教職員の資質の向上」との記載がありますが、これでは個人情報保護について教員ばかりに求めることとなりかねません。日本における個人情報保護の諸制度は、他のデジタル先進国と比しても個人情報とする範囲が狭く、個人の権利を守る仕組みが弱いということを今定例会の情報政策等調査特別委員会でも指摘をしました。そうした制度上の不備についての記載がないことも重大です。また記書きでは統一規格についても触れられていますが、例えばデータが特定のクラウド上など一か所に集中するようなことがあれば、流出事故が起きた場合の影響は計り知れません。この間企業による個人情報流出の事故が相次ぎ、大規模システムの不具合なども度々ニュースになります。事故を防ぐ有効な手立てが求められていますが、この点も記載がありません。

 

 加えて、子どもの健全な成長発達のためにデジタル技術を活用するというのであれば、保護者負担の完全無償化、少人数学級の早期実現によるICT推進のための条件整備、ICT支援員のさらなる増員などが欠かせません。またスマホやタブレットの長期使用が脳の発達に影響する懸念も医師や専門家から指摘をされており、こうした健康被害の研究と対策も欠かせません。従って、こうした基盤が整わない中で学校教育にデジタル化を推進することは拙速です。

 

 以上述べた通り、学校教育におけるデジタル化について基本的な問題において不十分であることから、本意見書には賛成できません。

 

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