政策・見解

「小学校29校を17校に、中学校14校を6校にする」
子ども、教師、地域を無視した統廃合計画は撤回を

「区立学校適正配置検討プロジェクトチーム報告」にたいする
日本共産党の見解(全文)

2003年2月23日
日本共産党中野地区委員会・日本共産党中野区議会議員団



  1. 中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方及び具体的な方策についての審議会答申を踏みにじるもの
  2. 乱暴な「統廃合計画、および統廃合の進め方」―いきなり現存の小中学校を半減化―
  3. 「統廃合計画と学校選択制」の拙速な見解
  4. 中高一貫教育についての見解の問題
  5. 教育関係者、父母、区民あげての大運動で、「報告」撤回を

 さる、1月20日に開かれた区議会文教委員会において、中野区教育委員会事務局は「区立学校適正配置検討プロジェクトチーム報告」(以下、「報告」という)を示しました。
 この「報告」は、平成12年6月に教育委員会事務局内に設置したプロジェクトチームが検討してきたものです。一見、長い検討期間のように見えますが、実質的には、昨年6月に誕生した田中区長が「全ての施設をゼロベースで見直す」とした後、わずか半年ぐらいでまとめた性急なものです。
 区内の小中学校は、現に今学んでいる児童・生徒、教職員がいます。また、かつてそこで学んだ多くの人たちがおり、学校に対する思いも特別のものがあります。地域の中で果している数限りない役割もあります。地域の学校は、その存在を抜きにその町の歴史は語れないほど、人と町に深い関わりを持っています。
 しかし、この「報告」は以下に見るように、学校が持つこのような背景を全く無視し、「効率」(中野区経営改革指針)だけで、しゃにむに統廃合を進めようという内容になっています。

1 中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方及び具体的な方策についての審議会答申を踏みにじるもの

(1)区立学校適正規模適正配置審議会答申の「最小学校規模」

 中野区ではすでに1997年(平成9年)に教育学者や、区民公募員、教職員、町会、商店会、PTAなどの区民団体推薦委員、区議会議員の35人で構成する中野区立学校適正規模適正配置審議会を設置し、2年4ヶ月をかけて専門的、教育的検討を行ない、2000年(平成12)1月に答申(以下、「答申」という)を得ています。
 この答申では「学校の適正規模は、どの程度の規模が適正であると言えるのか、残念ながらこれに答えられる決定的な理論は存在しない。しかし、適正規模が学校教育を良好な条件のもとに進めるための基本的な条件としての意味を持っていることも事実である。そこで、本審議会は、法的基準や学習指導要領における教育活動などを手がかりに、適正規模を『望ましい学校規模』として考察することにした。その上で、学校規模がこの望ましい学校規模を下回ったとしても、関係者の努力や工夫によって規模のマイナス面を補いうる最小の学校規模についての検討を進めた。換言すれば、この規模を下回らない限り存置を容認していく学校規模として」「『中野区における最小学校規模』を設定する」(表1)と述べています。

表1

〈小学校〉
学級数 6学級(1学級×6学年)
児童数 120人程度以上(20人×6学年)
ただし、20人を下回る学年が複数存在しないこと
〈中学校〉
学級数 6学級(2学級×3学年)
生徒数 130人程度以上(41人×3学年)」

 その上で「本区の場合、小・中学校ともに学校規模において、学級数で6学級かつ児童数120人、生徒数で130人を下回る学校は現在存在しない。また、平成11年度推計による平成17年度の学級数と児童・生徒数の推計を見ても、6学級の小学校が3校、中学校が7校と増加することが予想されるものの、児童・生徒数ではそれぞれ170人〜200人が在籍するものと見込まれている。したがって、中野区における最小学校規模を基準とする限り、小規模校を統廃合し望ましい学校規模を確保しなければならない緊急性は見当たらない」と結論づけました。
 日本共産党は統廃合問題について、きわめて慎重な対応を求めたこの答申の基本精神を尊重するよう一貫して主張してきました。

(2)「報告」が示した区立小中学校適正規模

 ところが、審議会の答申を受けた教育委員会事務局は、事務局職員6名と小中学校長各1名で構成するプロジェクトチームをつくり、〈区立小中学校の適正規模〉を表2のようにすると、かってに決めています。
 これは審議会答申を真っ向から否定するものです。条例で設置された審議会の答申は、行政も教育委員会も法的、道義的にそれを尊重することが求められるのは当然です。答申の基本精神をねじ曲げることは許されるものではありません。

表2

〈小学校〉
18学級程度
 児童数600人程度(100人×6学年)
〈中学校〉
18学級程度
 生徒数630人程度(210人×3学年)

 この「報告」は、適正規模を「集団教育」ができるかどうかということだけに矮小化しているのが特徴です。教育現場や児童・生徒たちのおかれている現状を無視し、統廃合をして学校を大規模化すれば「集団教育」が可能になるとする、余りにも短絡的なものです。その背景にあるものは財政「効率」をすべてに優先し、教育もその物差しでしか見ないという非教育的なものです。
 文部科学省が基準としている40人学級では、子ども達に行き届いた教育ができないとして、小人数学級を求める声は日本全国に広がっています。
 すでに長野県や山形県など、県レベルでそれを実施する自治体が増え、少なくない市や町でも検討がすすんでいます。
 中野区教育委員会プロジェクトチームの「報告」は、このような全国的な流れも無視するものです。

2 乱暴な「統廃合計画、および統廃合の進め方」―いきなり現存の小中学校を半減化―

 この「報告」では、「小規模化への対応としてより現実的な方策を考える必要がある」として「小学校12学級未満、中学校9学級未満の学校については、校舎の改築を待たずに、可能な限り早期に統廃合を進めるべきと考える」として、第一段階として表3の学校を名指ししています。

表3

〈小学校〉
新山小、向台小、仲町小、桃丘小、谷戸小、中野昭和小、東中野小、沼袋小、西中野小。
〈中学校〉
中野富士見中、第十中、第十一中、第九中、第三中、中央中、第六中、第四中、第八中。

 さらに第二段階として、「第一段階で統廃合ができなかった学校も含め、その他の学校については校舎の建て替えに合わせて望ましい学校規模になるように統廃合を行う」として、最終的には現在の「29の小学校を17校に、14の中学校を6校にする」というものです。
 これは審議会答申が「区立学校と地域社会の関係についても、審議の過程で様々な視点から論じられた。その一端を紹介すれば、区立学校は地域に根ざした学校であってほしいという主張をはじめ、通学区域と町会・自治会エリアの関係、学校と社会教育との関係、学校教育への地域の人材活用、地域防災拠点としての学校など議論のテーマは多岐にわたった。こうしたテーマの多様性は、反面、区立学校がいかに地域社会と密接に結びついているかをあらわしており、児童・生徒の健やかな成長には、地域社会の教育力に負うところがいかに大きいかを示している。今後、区立学校の再配置を行う際には、こうした区立学校と地域社会とのこれまでの多様な結びつきに十分配慮し、地域の教育活動の拠点化など区立学校を地域コミュニテイの一つの核として見直していく必要がある。」と述べた、重要な見地を無視した乱暴なものです。
 このような統廃合計画を許せば、いま全小学校単位に設置されている学童クラブ、児童館もそれに合わせて廃止され、地域の財産が無くなることにもつながります。

3 「統廃合計画と学校選択制」の拙速な見解

 また、いま各地で問題になっている学校選択制について、「報告」では「導入に向けて具体的な実施方法を検討する必要がある」としています。しかし、これについても答申では、選択制を主張する論と、それがもたらす弊害の大きさを指摘する論の両方を紹介し、「学校選択制については、先行実施している他の区市町村の状況なども見ながら慎重に検討されることが望ましい」としていたこの見解を、なんの反証も、検証もなく覆すものです。
 学校選択制について、東京大学の藤田英典教授は「学校を、市場メカニズムの中に置き、消費者主権の対象としてのウエイトを高めて行くとき、パブリック・スペースとしての学校の地位は低下し、その機能が縮小していくことになる。人々は、消費者としてのニーズが満たされているかどうかというまなざしでとらえるようになり、そのレベルで学校を評価するようになる。学校を選ぶことができるということは、学校を序列付けることに直結する。より序列の高い学校、より商品価値の高い学校を選ぶということは、学校を市場価値に換算して評価するということである。そのとき、学校は公論の対象としての地位から市場における商品の地位に転落することになる。」として警鐘を鳴らしてきました。学校選択制を導入した品川区、日野市ではこの予見通りの事態が進行しているといわれています。これらの意見を聴取したり、先行する他の区市町村の事例を調査し、その結果を示すこともなく、このような結論をだすということは、余りにも拙速です。

4 中高一貫教育についての見解の問題

 「報告」は中高一貫校について、「高校入試の影響を受けずにゆとりある安定的な学校生活が送れること、6年間の計画的・継続的な教育指導が展開できること、異年齢集団による活動を通して社会性や豊かな人間性を育成できることなど、多くの意義がある」として全く無批判的にその導入を求めています。しかし、中高一貫教育については様々な議論があり、教育学者の多くは「特別の学校施設をつくり、親の関心、選択を集中させ特別な子どもだけが集中するエリート校をつくり、他の学校との格差、序列を拡大する」と深刻に危惧しています。
 こうした意見に耳を傾けない「報告」には強い疑問を抱かざるをえません。

5 教育関係者、父母、区民あげての大運動で、「報告」撤回を

 今回のプロジェクトチーム「報告」は、以上に見てきたように余りにも大きな問題を持っているものです。
 学校はひとり教育委員会のものではありません。区民のものであり、地域住民のものであり、数限りない区民との共同で育てあげ、築きあげてきた大切な財産です。
 「財政が大変」「教育に金がかかりすぎる」という行政だけの都合で、教育が台無しにされることは許されません。学校が無くなるということは、子どもにとっても深刻であり、その学校を核としてつくられてきた町が、地域が、商店街さえも大きな影響を受けます。近くに学校があるかないかは、多くの人々が、そこに居住し生活の場とするかどうかの選択の条件になります。地域の学校が無くなるということは、長い目で見ればその地域の人口の流出、少子化を促進する結果にもつながりかねません。
 中野区は、学校の統廃合だけでなく区立図書館も区立幼稚園も統廃合する計画を検討しています。
 まさに、中野の教育の危機です。
子どもを学校に通わせている保護者のみなさん、すべての学校・教育関係者のみなさん、それぞれの地域、町会、商店街、学校OBのみなさん、このような一方的な統廃合計画を撤回させ、中野の教育を守り充実させる大きな運動にこぞって立ち上がろうではありませんか。
 日本共産党はその先頭にたってたたかいます。

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