2011年12月27日
中野区長 田中大輔 殿
日本共産党議員団

平成23年度事業見直し内容(案)についての見解

10月下旬に示された平成23年度(2011年度)事業見直し方針に基づき、1か月後の11月下旬に「平成23年度事業見直し内容(案)について」が報告・発表されました。事業見直し内容(案)の大半は子ども教育と健康福祉にかかわる分野です。このまま実施されれば区民生活への影響は甚大です。

○なぜ事業見直し=区民サービスの切り下げなのか
区は、特別区民税と特別区交付金の基幹的な収入減を理由に、財政非常事態だとして事業見直しの必要性を説いています。しかし、税収減は区民の責任ではありません。
円高不況と震災による景気悪化が日本経済と国民生活を襲いました。的確な経済政策を打たなければならないのに、政府はこれまでと同じように経済政策の誤りと失政を繰り返しています。税収減少の責任は専ら国にあります。
この間にも政府は、復興に名をかりた庶民増税を強行しました。個人や中小企業には所得税・住民税の増税など25年間で8兆円を超える大増税を押し付ける一方、大企業には法人税の大減税です。大資産家への証券優遇税制をまたも延長しました。これでは税収財源を増やすことはできません。さらに「税・社会保障の一体改革」と称して、消費税率の10%への引き上げと社会保障制度の大改悪を行おうとしています。新たな負担増と給付減によって、更なる暮らし悪化と将来不安の増大は必至です。
区はことあるごとに「持続可能な区政」を口にしますが、大半は国の制度改定や財政のあり様によって施策・事業の変更が余儀なくされています。そのことに区は、反対を表明するでも意見を述べるでもなく、容認もしくは快諾しているのでは、やはり責任が問われるというものです。区民に肩代わりさせ、区民サービスを切り下げるのは間違いです。

○持続可能な財政運営=区民の福祉・くらしは置き去り
区は「事業見直し方針」で「一層の財務規律の強化」を述べて、「一般財源充当事業の歳出規模を650億円とする基準を厳守する」としています。
一般財源充当事業の伸びを気にすることはあっても、それ以上になぜそうなっているかの要因をみなければなりません。貧困層が増え続け、区民生活の厳しさは深刻です。それゆえ扶助費などの経費が増え続けているのです。福祉・教育の経費が必要となるのは当然です。行政は区民生活を守るために財源を確保・充当しなければなりません。
区は、事業見直しの理由の1つに、負担の「公平化・適正化」を持ち出しています。しかし、どこに軸足を置いた「公平化・適正化」なのでしょうか。本来は区民が負担しなくても良い事業、あるいは、重い負担を課す事業などの是正をはかることもなく、逆に負担増を行うことで「公平化・適正化」としています。受益者負担の濫用が際立っています。
「事業の継続」のためとも言いますが、安心して事業が受けられることでその値打ちは図られます。負担増によりサービスの抑制を招くのでは本末転倒と言わざるを得ません。ソロバン勘定だけによる公的責任の放棄は許されません。社会保障制度の理念を想起すべきです。

○一般財源収支だけの虚構の財政非常事態=基金の活用で賄えるはず
「事業見直し方針」によれば「財政調整基金の年度間調整分の残高は133億円余りであり、このままの状態で繰入れを続けていくと、平成27年度には基金が底をつくことになる」としています。しかし、平成22年度のように57億円の繰入れを予算で計上しながら10億円で済ませたように、歳入の特定財源を過少に見積もり、歳出の執行統制等によって、決算値では別の結果がでることが想定できます。「基金が底をつくことに」はなりません。この10年間の歳出の不用額をみても、一般会計の財政規模はまちまちであっても、約30億円~40億円を超す金額が生じています。新たな基金の積み増しさえ考えられます。
9月末のすべての基金残高(介護給付費準備基金を除く)は405億円にもなります。特定目的基金で積み立てた基金は、その目的にしか使えないと考えるために財政調整には回すことができないと解釈されていますが、財政が悪化した時に基金を取り崩して使うことができないということはありません。基金の当初の目的を変更すれば必要に応じて使えることはもちろん、基金の運用、使用先については行政の裁量権の範囲も広いと考えます。「財政非常事態」ならば、それぐらいの活用があってしかるべきです。
また、国や東京都の補助金などの特定財源も住民福祉の増進に不可欠な財源です。一般財源収支だけとらえた虚構の「財政非常事態」といわざるを得ません。区民施策を削減する根拠は乏しいといえます。

○大規模開発関連事業の見直しを
区は、中野駅周辺まちづくりは今後も推進するとしています。財源は特定財源だから一般財源を圧迫することにならないともいいます。しかし、すでに開発事業に係わる調査費等に莫大な費用を投入し、起債の発行も膨れています。今年度からは都市政策推進室まで設け、ハード・ソフト一体で開発関連事業に邁進しているといえます。そこでの人件費は一般財源に充当され相当な金額になりますが、あえてそのことに言及しないのも問題です。
そもそも、国・都からの交付金・補助金、全額賄われるとされる財産費相当の特別区交付金も区民の税金であることに違いはありません。今日も東京都は区側の需要を低く見積もっていますが、特別区交付金総体が減っている折に財産費相当額の確保によって、肝心の福祉・教育費が需要算定から除かれる事態が懸念されます。
「事業見直し方針」の「歳入確保」では、「まちづくり・まちおこしで収入を増加させる」とし、「大規模なまちづくり事業の進展や、それに連動するまちのにぎわい創出事業などについて、(…)消費や税といった経済波及効果を的確に把握する」としていますが、経済波及効果を期待しながら、区自らがまったく予測がつかないことを語っているにすぎません。
他の開発事業も同様のことがいえます。西武新宿線連続立体交差事業による地下化の推進は、長年に亘る区民要求であり当然のことです。しかし、連続立体交差事業にともなうまちづくりについては見直しが必要です。駅前広場と道路の整備については、住民合意があるとはいえません。急いで整備する必要はなく、住民合意を大事にすべきです。

○事業見直し(案)の再検討を
1月に事業見直し内容を決定し、来年度予算から反映させることにしていますが、暮らしを脅かす事業見直し内容(案)は再検討すべきです。議論の素材としても不適切・不十分です。区は必要な情報を提供し、さまざまな検討と区民議論を保障すべきです。
日本共産党議員団は、区民の立場にたった財政運営を実現するため、区民のみなさんとともに、全力を尽くします。

見直される具体的な事業について

党議員団は、76の事業見直し案について多くの問題点を指摘し、必要性を求めてきました。また、党議員団には区民からの相談が寄せられているところです。その事を前提に、区民福祉、教育、子育て、自治活動などに与える影響を考慮し、「財政効果を生み出す」ために切り捨てられてはならない、主な事業について見解を述べます。

政策室
1、男女共同参画センターの区役所内移転をしないこと。
職員数を削減して財政効果を生み出すために現勤労福祉会館を廃止し、(仮称)産業振興センターに転換しようとしています。これでは区としての「勤労」施策の視点が欠落してしまいます。さらに、消費生活センターと同様に、区民参加が閉ざされ、男女共同参画の取り組みが形骸化されることが懸念されます。

区民サービス管理部
1、消費生活センターの事業縮小を中止すること。
相談体制は維持するが、都補助金の段階的廃止に伴い事業を縮小するとの説明です。しかし、消費生活を向上させるための出前講座や、市民活動を支援する拠点がなくなります。区の消費生活をすすめる施策から、ますます区民を遠ざけることはあってはなりません。

都市政策推進室
1、中野区シルバー人材センター補助金の削減はしないこと。
補助内容を見直し、補助額を削減しようとしています。この間も補助金が削減されてきました。今日、シルバー人材センターには生活費に充てるために登録する区民が増えています。その状況に照らせば、センターの活動をより広く展開できるようにすることが求められます。そのためにも、補助金の削減はしないことが肝心です。

子ども教育部
1、社会科見学・遠足代公費負担(25年度から)は継続すること。
2013年度より公費負担分を廃止しようとしていますが、社会科見学は特別教育活動の一環であり、参加が義務付けられていることからも、公費負担は当然です。現在の公費負担は、小学校2385円、中学校3872円であり、本来義務教育無償化の原則に照らせば保護者のあらたな負担となることは避けるべきです。

2、就学援助の見直しにより対象者を縮小しないこと。
(1)生活保護基準の1.2倍の基準を1.15倍に引き下げようとしています。その結果、現在受給している児童・生徒を含め対象外になる範囲が広がり、教育の場に格差を広げることになります。私立学校在籍者への支給廃止は、教育を受ける機会を選択し、義務教育を受ける権利を保障しなければならない教育委員会の責任を果たさないことになります。

3、母子家庭自立支援教育訓練給付金の支給削減はしないこと。
見直しにより、希望する人に実施されていたものが雇用保険未加入者のみに限定され、その支給額が10割から2割に削減されます。母子家庭の所得の厳しさを顧みない仕打ちです。この制度によって生活の自立を可能にしてきましたが、その道を閉ざすことにつながりかねません。見直し内容の実施は見送るべきです。

4、児童福祉法による保育運営費の減額をしないこと。
保育園入園児童にかかる保育経費で、区が単独で加算している一部を減額することにしています。区は、ますます公的責任を後退させるとともに、保育施策を民間に任せる中、財政効果を子育て経費を削って生み出そうとするのは間違いです。

地域支えあい推進室
1、精神障害回復者社会生活適応訓練実施場所は統合しないこと。
南部地域のすこやか福祉センターでの実施を、利用者減を口実に廃止しようとしています。しかし、ディケア実施の周知を怠り、65歳以上の利用を制限するなどの問題がある上、区民ニーズも調査しないのでは納得は得られません

2、高齢者福祉センターは継続すること。
2013年度には弥生・松が丘を、2014年度には堀江・鷺宮を廃止しようとしています。ところが、いずれの施設も地域の高齢者の交流と生きがいに役立つ施設として多く活用されています。地域の町会などにも利用されています。廃止し、民間事業に貸すとのことですが、高齢者の生きがいの場、地域住民の活動の場を奪ってはなりません。

健康福祉部
1、おむつサービスの前年所得額への変更と所得制限引き下げはしないこと。
区民税額から所得額への変更、および所得制限額の引き下げによる対象者の削減は、高齢者本人はもちろんのこと、家族にとっても大きな負担となり、介護がさらに重くのしかかることになります。いのちを守り安心して介護ができるよう、せめて現行どおりおむつサービスは継続することが重要です。

2、眼科検診を継続すること。
有所見率が高いから廃止するとしています。しかし、そのことは、それだけ早く検診を実施することが必要だということを示しています。現在50歳からの検診を改め、対象年齢を40歳に下げて実施することが区民の健康を守る区のつとめです。

3、福祉タクシー利用の所得制限導入はしないこと。
福祉タクシー対象者からはじかれる障がい者は、社会活動や生きがい参加の機会を失います。今でも障がい者の負担が増えています。これ以上の負担を増やすべきではありません。

4、障害者通所施設利用者食費負担軽減支援を継続すること。
国の措置が終了することにあわせて区も廃止しようとしています。しかし、低い工賃と障害者自立支援法の狭間で苦しめられる施設利用者にとって、昼食代を補助されていることは仕事や施設通所への意欲にもつながっています。自立支援法以前から区独自策として実施してきた制度を財政効果を生み出すために廃止することはやめるべきです。

5、生活保護世帯の法外援護(学童衣、運動衣購入費、修学旅行支度金)は継続すること。
生活保護世帯への学習支援費、児童養育加算により必要経費が賄えることを廃止の理由にしています。しかし、児童・生徒がいる生活保護世帯の状況は深刻です。収入が少しでも増える施策が実施されれば一方を切り、全体の収入をいつまでも引きあげないなど、あってはなりません。児童養育手当て(子ども手当て)はすべての子育て世帯に支給されているものです。生活保護世帯を別扱いすることは不当です。

6、いずみ教室の自動車利用料の一部負担導入はしないこと。
見直しはバス代の半額を自己負担にするとしています。しかし、そのことで参加できない人が生じるなど懸念されます。この事業は知的障害者の仲間づくり、生活技術向上、余暇活動の充実を目的にした活動の一環として欠かせません。一部負担導入はやめるべきです。

7、地域生涯学習館の廃止はしないこと。
今年度、地域生涯学習会の担当が教育委員会から健康生きがい分野に変更されました。その結果、生涯学習分野で担ってきた位置づけが後退し、施設が貸し会場的になり、事業の位置づけが区民の趣向的なものと変質されました。地域での生涯学習分野を担う施設として、その目的を果たすための事業が展開されてきた経過からみても、区民参加の検討も無く事業廃止を打ち出したことはあまりにも軽率です。

都市基盤部
1、耐震化推進に逆行する耐震補強設計費助成は実質的な耐震化事業に発展すること。
減税対策として実施されていた事業であり、税法改正に伴い廃止するとしています。ところが、この事業によって、減税対策だけでなく区民が木造住宅の耐震化を視野に入れることができていました。さらに、23区では中野区だけが木造住宅耐震補強工事助成がありませんが、この事業によって耐震化へとつなぐ事が可能でした。国の法改正を機会に、区として実質的な耐震化事業を実施すべきです。