9月8日、「平和の森公園の再整備及び新体育館の建設方針に対する見解」として、区長へ申し入れをおこないました。

 

2015年9月8日
中野区長 田中 大輔 殿
日本共産党中野地区委員会
日本共産党議員団

平和の森公園の再整備及び新体育館の建設方針に対する見解

 6月30日付けで総務委員会、厚生委員会、建設委員会で示された、『平和の森公園の再整備及び新体育館の建設について』なる報告文書は、現在の平和の森公園のあり方を大きく転換するものとなっています。
平和の森公園に全区的なスポーツ大会が行える規模の新体育館の建設と、陸上競技トラックや大人の軟式野球も行える多目的グラウンド等の整備を行うことにしていますが、これに対し区民・利用者から「現行の利用を維持して」「草地や樹木はそのままに」など、平和の森公園の再整備に対して反対の声があがっています。区議会に7本の同趣旨の陳情が出され3,600筆にものぼる署名が添えられていることに関心の高さと事の重大さがみてとれます。

1、「方針」の中身の何が問題か
区は「公園全体を再整備することによって、平和の森公園のこれまでの機能を向上させていく」としています。しかし、この方針では、以下のように区民の自由な利用が妨げられ、防災上の広域避難場所としての避難有効面積及び防災機能が大幅に削減される恐れがあります。

(1)新体育館整備について
区の説明では、新体育館は延べ床面積を1万m2程度と、現行体育館6千m2より大規模な建設を予定しています。具体的な設計は示されていませんが、「メインアリーナにおいては、多様な競技が実施可能な広さを備えたもの」とし、合わせて、駐車場の確保と、団体バスの駐停車場も確保するならば、現在の少年スポーツ広場の面積約4千2百m2を超える敷地面積となることは明らかです。
広場周辺の樹木の伐採は避けられず、夏の避暑機能と防火機能の低下を招きます。さらに、水辺の広場も維持できなくなります。弥生時代の復原住居や平和資料展示室併設の公園事務所を含めて、中野区が取得した2.5haの大半が維持されません。
区は平和の森公園の再整備による効果として、「新体育館を設置することによって防災機能向上を図ることができ(る)」とし、「体育館の大規模空間を生かし、帰宅困難者の一次滞在場所や大規模災害時の物資の荷捌き場、各種支援団体の活動場所として活用」するとしています。しかし、これでは貴重な避難面積が潰され、公園外周の防火樹林の伐採によって広域避難場所である公園の防災機能は大きく喪失することになります。区民の貴重な緑と広場が奪われることは認められません。
平和の森公園の周辺は、平和の森小、旧沼袋小跡地、第七中学校、哲学堂公園など、他の地域に比べても恵まれた施設とオープンスペースがあります。これらの恵まれた条件をいかし、防災救護施設の整備や備蓄物資の保管、帰宅困難者の受け入れなどを総合的に検討することこそ、必要なことではないでしょうか。

(2)陸上競技トラック整備について
現在、区民が自由に利用し、憩いの場となっている草地広場に、300m程の陸上競技トラックを整備するとしています。管理・運営については触れられていませんが、仮に、時間帯による陸上トラックの団体・個人利用が図られるならば、この広場を区民が自由に利用することはできなくなります。トラックを整備し自由な利用に供するとしても、現行の利用との共存は難しいといえます。
たくさんの区民が利用し、いつでも誰でも自由に利用できる草地広場を奪うことは断じて認められません。

(3)軟式野球等多目的グラウンド整備について
「方針」では、大人の軟式野球が行える多目的グラウンド整備についても触れられています。
約1haの未開園部分の一部と草地広場にまで張り出すグラウンドが想定されます。覆蓋部分上部に防球ネットを支える重量のポールを設置することができないことから、グラウンドの敷地面積を確保するために、草地広場を削らざるを得ません。野球場の需要があることは確かですが、この場所での軟式野球場は不適切です。この「方針」では、陸上競技トラック整備と合わせて、子連れから高齢者まで多くの区民が利用している草地広場を壊すことは必定であり認められません。

2、再整備方針は平和の森公園利用計画の歴史的経過を無視する暴挙
平和の森公園の整備に至っては、区民・区議会・区の3者による長年にわたる中野刑務所廃止・跡地解放の運動があったことが想起されなければなりません。
1976(昭和51)年に発行された中野刑務所跡地利用を考える区民協議会の報告書『中野刑務所跡地の利用計画について』によれば、1954(昭和29)年を起点に「刑務所の移転を求める区民運動が広範に、しかもねばり強く展開されてきた」とし、1975(昭和50)年9月の法務大臣の「廃止声明」により、「全区民一致の長く苦しい区民運動の成果」をみたと記されています。
廃止声明をめぐって区民の間に多様な区民福祉施設の要求が広がりましたが、区民協議会においても再三の討議を重ね、「今後二度と出現し得ないであろう貴重な公共空間」であるとの認識から、「20余年の区民運動が求める“みどりの広場と避難場所”の目的と過密な中野区の現況に照らし、跡地は可能な限り空間として確保し、分割的な利用はせずに一体的な活用を図るべきである」と結論づけられています。
1981(昭和56)年2月には、前年に設置された「中野刑務所跡地利用計画区民協議会」が丸1年を費やして、「中野刑務所跡地にみどりの防災公園をつくるために」と題する基本計画案をまとめ区長に提出しています。基本計画案では、「(1)防災都市づくりの拠点とする、(2)新しい避難場所の姿を示す、(3)人間交流の拠点とする、(4)基本構想の『安全で快適なまちづくり』のきっかけとなるよう、将来への発展性を持つものにする」と4つの柱で示しています。その実現のために、「緑の広場を中心に樹林帯と水辺をできるだけ多く配置して防災に備える。平常時には、子供たちが自由に遊びを創り出せるような広場や、家族でレクリエーションを楽しめる多目的な空間とする。…(中略)…さらに、障害のある人、お年寄り、子供などあらゆる区民が、日常、非日常とも気軽に利用できるよう十分配慮する」としています。
1997(平成9)年から1998(平成10)年に至る「平和の森公園第2期整備地域検討会」における検討の成果においても、「この公園の基本的な位置づけは、『刑務所跡地利用区民協議会報告─昭和56年─』が示す“みどりの防災公園”と“家族を中心としたレクリエーションの場”であることを確認」しています。
長い区民運動とその成果を無視し、時の権力の都合だけで平和の森公園の利用計画を変更することは許されるものではありません。

3、区民参加、区民合意の区政運営の基本が反故にされている
長い年月を掛けて、区民の合意で勝ち取られた平和の森公園をまともな情報提供もなく、区民合意を得る努力もないままに進めるのは大問題です。
この度の方針は余りにも拙速であり、年度内に計画を決めることは乱暴極まりないものです。しかも、構想している新体育館や陸上競技トラックなどの整備配置図を区民に示さず庁内での検討にとどめ、挙げ句に一部の区議会議員にそれをリークし、区民への圧力に利用している事は行政としては絶対にあってはならない事です。
「区民協議会」での結論はもとより、刑務所跡地取得のための都市計画決定や、当時の建設省からの補助金決定等の法的拘束を反故にすることは非常識も甚だしいと考えます。

4、整備構想並びに整備基本計画策定の外部委託は直ちに中止を
以上のように、9月にも予定しているとする問題だらけの再整備方針を基にした外部への構想・計画策定業務委託はすぐに中止すべきです。
東京都下水道局に依頼している調査も、未だ行われていない状況からも、このような拙速・乱暴な進行と内容は、後々大きな禍根を残すことは必至です。

5、東京オリンピックを理由とした平和の森公園の再整備は急ぐべきでない
区は東京オリンピック・パラリンピックの開催に間に合わせたい旨の説明をしてオリンピックを免罪符にしようとしていますが、本音は区役所とサンプラザの解体・一体再開発と新区役所の移転建設による、玉突きの平和の森公園内への新体育館建設ではないでしょうか。
もともと「新しい中野をつくる10か年計画(第2次)」では、新体育館整備は旧九中跡地とされていました。議会には、旧九中跡地からグランドデザインVer.3における「区域3」(警察大学校跡地)への候補地変更について報告されたものの、それ以降はありませんでした。この度の平和の森公園内への変更は、議会質問への答弁という突然の話です。すでに庁内では平和の森公園内を候補地にしていたということでしょうか。区は他の事例では、しばしば「10か年計画」を金科玉条のごとく掲げて変更を認めないとしながら、一方では行政都合でいとも容易く変更してしまうという事例が頻出しています。今回の事例でもまったく一貫性がなく、およそ区民に信託された自治体行政のとるべき姿勢とは言えません。

6、新体育館の建設は場所の設定を含めて区民参加で検討を
新体育館については、平和の森公園内での建設は白紙に戻し、十分な区民参加を保障して検討する必要があります。その際、もともとの計画であった旧九中跡地や、その他の公有地などでの建て替えを、いま一度検討すべきです。そのことを含めて、自治基本条例に基づき現在の公園の計画時のような区民が参加する新しい「(仮称)区民検討協議会」を設置し、検討することを提案します。
なお、付け加えるならば、旧九中跡地を区内の中野総合病院の建替え地に活用することを検討していくとの区長答弁がありますが、適正な手続きを踏まえることなく区民財産を一民間事業者に払い下げるような言動は、行政の公正・公平にもとる行為であり、利益誘導ではないかとのそしりは免れません。改めるべきです